【素材、焼き方】瓦の種類をまとめてみました【形状、施工法】
今回は、瓦の種類分けの仕方をまとめてみました。
瓦は大きく分けると、以下のように分別できます。
瓦の材料
・粘土瓦
・セメント瓦
瓦の焼き方
・いぶし瓦
・素焼き瓦
・塩焼き瓦
・釉薬瓦
瓦の施工法
・本葺き、行基葺き
・土葺き
・引っ掛け桟瓦葺き
瓦の形状
・本葺き瓦
・和瓦、桟葺き瓦
・スパニッシュ瓦
・S型瓦、S瓦
・平板瓦、フレンチ瓦
→Mタイプ、Uタイプ、Fタイプ
瓦を使う屋根の部位
・丸瓦
・平瓦
・桟瓦
・冠瓦、熨斗、台熨斗瓦
・軒瓦
・袖瓦、掛瓦
・巴瓦
・角瓦
瓦の産地
・三州瓦
・石州瓦
・姫路瓦
厳密にはこれ以外にも細かい種類分けがたくさんあります。
しかし今回は、ひとまず混乱を避けられるように簡単に種類分けしています。
瓦の名前を聞いて、何が何だかわからない!といった方は是非ご参考ください。
瓦の材料
粘土瓦とは、文字通り粘土を原材料とした瓦です。古くから慣れ親しまれた瓦であり、焼き方によって見た目が大きく変わります。
セメント瓦とは、文字通りセメントを押し固めて成形し、瓦に似せたものです。粘土瓦と違い焼くことがなく、表面を塗装してメンテナンスします。セメント瓦に似たものとして、スラリー瓦やモニエル瓦があります。
瓦の焼き方(焼成方法)
粘土瓦は粘土を成形した後、焼成することで完成となります。
焼き方にもいくつか種類があるので紹介します。
いぶし瓦とはその名の通り燻して焼成する瓦です。現在では一度焼いた後に炭素ガスを吹き付けて焼成します。
素焼き瓦とは文字通り素のまま焼いた瓦です。粘土を成形した後、そのまま焼成を行います。色が似ているので塩焼き瓦と間違えられやすいです。
塩焼き瓦とは、粘土を成形したあと、塩化ナトリウムを施釉してから焼成する瓦です。色が似るので、素焼き瓦と混同されがちですが、厳密な意味での素焼き瓦はほとんど使用されることはありません。
釉薬瓦とは、粘土を成形した後焼成前に釉薬を施釉した瓦のことです。釉薬により様々な色合いが出せるようになり、瓦のラインナップが多くなりました。
瓦の施工方法
瓦の施工方法には大きく分けて2種類の工法があります。
日本で古来より葺かれ、いまでも寺社仏閣などで見かけることが出来る「本葺き」とそれに似た「行基葺き」。
江戸時代に開発され、現代に至るまで日本の瓦として親しまれている「桟瓦葺き」です。
桟瓦葺きには2000年頃を境に2つの工法があります。
葺き土と呼ばれる泥を使用して屋根下地と瓦を圧着する従来の「土葺き」。
瓦の裏側に爪を成形し、屋根下地に予め取り付けた「桟木」に引っ掛ける新たな工法、「引っ掛け桟瓦葺き」です。
現在の新築などではほとんどが「引っ掛け桟瓦葺き」を採用しており、土葺きは築年数の古いお家などで今でも見かけられます。
簡単にまとめると
・本葺き、行基葺き:寺社仏閣などで見られる工法。丸瓦と平瓦の二枚一組を組み合わせて葺く。
・桟瓦葺き:平瓦と丸瓦を兼ねる「桟瓦」が江戸時代に開発され、以降和瓦として親しまれてきた。
・土葺き:桟瓦の工法として、屋根下地と瓦を泥で圧着して葺く
・引っ掛け桟瓦葺き:土を使わず、桟木と瓦のツメで引っ掛けながら葺く
ということになります。
瓦の形状
瓦は様々な形状が開発され、多くの種類の瓦屋根を誕生させました。
日本の和瓦はもちろん、諸外国でも古くから瓦は独自の形状を深化させていきました。
原題では、それらの瓦をより美しく、簡単に葺けるようさまざまな形状が開発されました。
本葺き瓦
本葺き瓦は中国より日本に伝わった最初の瓦で、平たい平瓦と丸い丸瓦を組み合わせて施工します。重量が重く、古来の一般家屋では重みに耐えられず施工が困難でした。
桟瓦、和瓦
桟瓦は江戸時代に開発され、本葺きと比べて瓦屋根の大幅な軽量化を実現しました。これにより一般住宅でも瓦屋根が親しまれるようになり、現在の和瓦のイメージを定着させました。
スパニッシュ瓦
その名の通りスペインから伝わった瓦で、大正時代に日本でも西洋風建築とともに普及しました。ヨーロッパで独自の深化を遂げた瓦で、立体的な葺き上がりが特徴です。
S瓦
勘違いされがちですが、厳密にはS瓦とスパニッシュ瓦は別物です。スパニッシュ瓦が日本に伝わり、元来の施工方法をより簡単にできないかと考案、開発されたのがS瓦です。
平板瓦
フレンチ瓦と呼ばれる瓦から考案され、2000年頃から全国で普及しました。他の瓦に比べても特に見た目が平坦です。それぞれの形状から、平板瓦の中でも特に三種類のタイプに分かれます。
平板瓦 Uタイプ
瓦の左右両端が盛り上がった形状です。断面がUの字見えることからUタイプと呼ばれます。
平板瓦 Mタイプ
断面を見ると、山が2つあってMの字に見えるので、Mタイプと呼ばれます。
平板瓦 Fタイプ
他の平板瓦と比べても特に平たい瓦です。完全にフラットな見た目をしている、もしくはフレンチ瓦のFからとってFタイプと呼ばれています。
瓦を使う屋根の部位
瓦を種類分けするときに、その瓦が屋根のどの部位に使用されているのかは非常に重要です。
瓦は屋根の平面に葺く瓦を桟瓦、それ以外の部位に使用するものを役物と呼びます。
役物という言葉は、ある規格品の中でも特殊な形状をしているものを指す建築用語です。
桟瓦
屋根の平面に使用する瓦です。
冠
棟と呼ばれる、屋根の頂上や隅棟に使用する瓦です
熨斗、台熨斗
棟と呼ばれる、屋根の頂上や隅棟に使用する瓦です
鬼瓦、巴
棟と呼ばれる、屋根の頂上や隅棟に使用する瓦です
軒瓦
軒先と呼ばれる、屋根の端部に使用する瓦です。
袖瓦
ケラバと呼ばれる、屋根の端部に使用される瓦です。
角瓦
ケラバと軒先が交わる点で、屋根の角に使用する瓦です。
瓦の産地
瓦は本来その瓦を使用する土地の土を使い、粘土を練って使用していました。
その方が、その地方の気候風土に合った瓦が出来上がり、より長持ちすると言われていたからです。
しかし時代が流れ、大量生産、大量消費の風潮の中で、地元の瓦を造る「窯元」と呼ばれる瓦屋さんは数を減らしました。
しかし昔の時代にも、瓦の名産地として謳われる土地はいくつか存在しました。
中でも三つの生産地で製造された瓦を日本三大瓦と呼び、それぞれ
・三州瓦
・石州瓦
・淡路瓦
と呼んでいます。
三州瓦
主に愛知県西三河地方で生産される瓦のことで現在生産されている瓦の6割以上が三州瓦と言われています。
石州瓦
石州瓦とは、島根県石見地方で作られた瓦のことです。水を通さず、凍らず、頑丈ということで有名な瓦です。
淡路瓦
淡路瓦とは、兵庫県淡路地方(淡路島)で作られる瓦のことです。きめ細かい土を使って練る粘土がいぶし瓦に適しており、いぶし瓦で有名な産地です。