瓦屋根の工事 土葺きと引っ掛け桟瓦葺き
土葺きと引っ掛け瓦桟葺き
瓦には多くの施工方法がありますが、その中でも「土葺き」と「引っ掛け瓦桟葺き」の瓦屋根は非常に多いです。
今回はこの二つの工法について解説していきます。
とても簡単に説明するならば、
土の上に瓦を置く「土葺き工法」と、瓦を引っ掛けるための棒に引っ掛けてある「引っ掛け瓦桟葺き」の二つです。
土葺きとは
土葺きとは、現在ではあまり採用されない施工方法です。「どぶき」「つちぶき」と読まれます。
いまでも、比較的古い住宅などでよく見られます。
特徴として
①瓦と屋根地の間に土が入っている
②屋根重量が重い
ことが挙げられます
①瓦と屋根地の間に土が入っている
土葺きと呼ばれるのはこの特徴のためです。
土葺き屋根では多くの場合
↑ 瓦
土
杉皮押さえ
杉皮
↓ バラ板
の順番で屋根が成り立っています。
バラ板:屋根の野地板にあたるもので、縦長の木板を並べたものです。
隙間が大きく、そこから除けば小屋裏が見えます。
横向きで、垂木と呼ばれる屋根を支える木材に利かせるように打ち付けます
杉皮:文字通り杉の皮です。バラ板の上に屋根全体に敷き詰めます。
杉皮押さえ:少し薄く、細長い木材の棒です。
杉皮を押さえつつ、杉皮の上に乗る葺き土がずり落ちないように支えます。
細長くて厚さの薄い木の棒です。横向きに打たれます。
土:葺き土とも呼ばれます。施工時は水分を含んだ泥状のものを使うので、泥と呼ぶことも
あります。
瓦一枚にひとかたまりの土を乗せます。かなり重量があります。
瓦:屋根の一番上で雨を受けます。
②屋根重量が重い
瓦の重量+葺き土の重量で、屋根全体の重量が重くなります。
屋根の重量が上がると、住宅自体の重心が高くなり、耐震性に不安が残ります。
よって、阪神淡路大震災の頃から土葺きの採用は減少し、新たに「引っ掛け瓦桟葺き」が普及していくことになります。
引っ掛け瓦桟葺きとは
阪神淡路大震災以、新たに発案され普及した工法です。「ひっかけかわらざんぶき」と読みます。
現在の新築の瓦屋根はほとんどこちらになります。
特徴として
①瓦一枚一枚に釘打ちする
②瓦一列に対し「桟木」と呼ばれる細長い木の棒を打つ
③屋根重量が軽い
の三つが挙げられます。
①瓦一枚一枚に釘打ちする
土葺きと大きく異なる点です。
土葺きでは、瓦を泥の上に載せているだけの状態ですが、引っ掛け瓦桟葺きでは、一枚一枚が釘で固定されています。
これにより、瓦を固定する力が強くなっています。
②瓦一列に対し「桟木」と呼ばれる細長い木の棒を打つ
引っ掛け桟瓦葺き」の「桟」の部分は、この桟木を指します。
引っ掛け桟瓦葺きの構成は
↑ 瓦
桟木
流水テープ
ルーフィング
↓ コンパネ
の順番で成り立っています。
コンパネ:現在主流の屋根地、野地板です。厚さ12ミリほどの木材の板です。
ルーフィング:下葺き材です。瓦の下に浸入した雨水から野地を守ります。
流水テープ:桟木の下に、縦方向に等間隔でうちます。
「キズリ」や「タンパン」と呼ぶこともあります。
厚さ3ミリほどの樹脂製のテープです。
このテープで桟木の下に隙間ができ、瓦の下に入った水が隙間から抜けて軒先へ流すことができます。
桟木:瓦を引っ掛けるため、横向きで等間隔に設置する細長の木の棒です。
一般的に木材のものを使用しますが、「引っ掛け瓦桟葺き」の由来となる部材です。
画像は樹脂製のもので、「人工桟木」と呼ばれます。
人工桟木は裏面に予め等間隔の凹み(水抜きと呼ばれます)があります。
この水抜き部分から水が抜けるので、人口桟木を採用する場合流水テープは必要なくなります。
瓦:屋根の一番上で雨水を受けます。瓦の上部に桟木を引っ掛けるためのツメがあります。
③屋根重量が軽い
従来の土葺き工法と比べて、屋根全体の重量を軽量化することに成功しました。これにより耐震性が向上しました。
最後に
今回は、瓦屋根の施工方法二種類について解説しました。
他にもいくつか施工方法はありますが、多く見られるケースとして、土葺きと引っ掛け瓦桟葺きを紹介しました。
特に土葺きの瓦屋根は比較的古い屋根であることが多く、屋根リフォームをご検討いただくケースが多いです。
この二つの工法について、ご参考になれば幸いです。