瓦のズレや浮きを修理せずに放置してしまうと...
瓦のズレや浮きを修理せず放置してしまうと何が起こる?
こんにちは。今回は、屋根の瓦のズレや浮きをそのままほうっておくと、どんな事が起こるのかを解説していきます。
放置の末に起こる二つの症状
瓦がズレてしまっていたりするのは、みなさんが屋根を見上げた時などにも見つけられたり、はたまた実際に上ってみないと分からなかったり様々ですが、見つけ次第早急に修理、補修をすることをおすすめします。放置したままだと、それが原因になって家の様々な症状につながってしまいます。みなさん日常の中で特段気にすることなく生活している屋根では、知らぬ間に悪化が進行しているケースが少なくありません。見つけ次第対応していくことが、屋根を守り、家を長持ちさせる秘訣なのです。
では、具体的に悪化が進行すると何が起こるのでしょうか?ひとつは雨漏り。そして最終的には屋根の崩落です。
雨漏りのメカニズムを説明する前に
なぜ、瓦のズレや浮きを放置すると雨漏りにつながるのでしょうか?なんとなくイメージとして、そのままにすると雨漏りしそうというのはお分かりいただけると思います。
しかし実際のところ、屋根の中でいったい何が起こって雨漏りになっているのかをきちんと説明するには、少し屋根の仕組みについてと、瓦の施工方法についてお話ししなければなりません。
・屋根の仕組み
・瓦の土葺き工法
土葺きとは、その名の通り土、泥を使った葺き方です。
住宅一軒一軒により異なりますが築五十年以上の瓦屋根は主にこの土葺き工法が使われています。
この方法は野地板に下葺き材を葺いた後、泥と呼ばれる湿った土で屋根と瓦を接着する方法です。この工法は土を乗せる分屋根の重量が上がってしまうので、新たな耐震基準とともに減少していきました。
屋根が重いと建物の重心が高くなり、耐震性が下がってしまうからです。またこの時代の建物は、野地板に使用しているのがバラ板と呼ばれる細長い板を平行に複数枚並べ、その上に杉皮、防水シートという順番で施工されていることが多いです。
杉皮は屋根全体に敷き詰められていますが、野地板であるバラ板自体は隙間が多く、現在新築では使用されていません。
引っ掛け瓦桟工法
こちらは、土を使わず桟木と呼ばれる細長い木材を平行に、防水シートの上から野地板に打ち付けます。
この桟木は瓦一列に対して桟木も一列打たれており、瓦をそれぞれの列の桟木に引っ掛けて施工します。
土葺きと比べ重量が軽くなるので、現在主流の葺き方になっています。
野地板も、現在ではコンパネや合板とよばれる大きめの木板を並べ、この上に防水シートであるアスファルトルーフィングを貼り付けるのが主流です。
1.雨漏り
引っ掛け瓦桟工法の雨漏り
引っ掛け瓦桟工法でよくあるケースが二通りあります。瓦のズレや浮きにより、下葺き材がそのまま外気に露出してしまうことで、雨漏りに繋がるのが一つ目のケースです。
例えば現在主流の下葺き材であるアスファルトルーフィングは耐用年数が30年ほどといわれています。しかし瓦がずれて毎日日光に直接晒されると、日光の紫外線を直接受け続けることで劣化が進んでしまいます。
このアスファルトルーフィングが劣化して破れてしまったりすると、雨は直接野地板の木材に落ちます。木材は水分を吸いやすいので、野地板の腐食も進みます。
また現在主流のコンパネなどの野地板も、隙間が完璧にゼロというわけではありませんので、少しずつ、雨水は屋根裏へ入り込みます。
野地板の下は先ほど説明した小屋組みと呼ばれる骨組みと天井裏なので、ここに雨水が入ってしまうことは、そのまま雨漏れに繋がってしまうのです。
次のケースとして、桟木を打ち付けるときに使用している釘が鉄であった時です。
現在主流の釘の材料は鉄とステンレスです。鉄はステンレスと比べて費用を抑えられる反面、水を吸いやすいという弱点もあります。
瓦のズレや浮きで、普段雨水が入らない場所や、入っても少量である場所に水が大量に浸入すると、この桟木の鉄釘も急速に錆び始めてしまいます。
釘が水を吸って錆びるとまずは水を吸った分、釘自体が膨張します。次に釘自体が朽ち果て、釘は小さくなってしまいます。
そうすると、釘を打った時の釘穴に、釘が膨張してから縮小した分の空洞、すき間ができてしまいます。
桟木はアスファルトルーフィングの上から野地板に対して打ち付けるので、この釘穴の空洞から直接野地板の下にまで雨水の浸入を許すことになってしまいます。
土葺き工法の雨漏り
次に土葺き工法の時に起こる雨漏りのケースを紹介します。
土葺き工法の瓦がずれると、まず、土が直接雨水にあたることになります。土葺き工法の土はある程度水を吸った後、晴れた日に乾くので、すぐに雨漏れに繋がるわけではありません。しかしこの時吸う雨水が、土の劣化を早めます。
このような葺き土の劣化は、雨水だけでなく湿気と乾燥を繰り返すことによっても起こります。土が劣化すると、水などに流されてしまい、量が減ってしまいます。
土葺き工法の土は瓦の下に敷かれていますので、これが減少してしまうと瓦自体が沈み込むような形になり、余計に瓦のズレや浮きを助長させます。この負の連鎖が続いてしまえば、瓦1枚のズレが2枚、3枚と増え続け、屋根はどんどん水が入るようになってしまいます。
土葺き工法の屋根は、下葺き材自体も古い材質のものを使っていたり、場合によっては杉皮だけが敷かれている場合もあります。
それだけでは防水機能は十分とは言えません。さらに言えば防水シートの真下に設置されている野地板も、バラ板なので隙間が多く、どんどん天井裏に雨水が浸入してしまうのです。
2.屋根の崩落
こちらは、屋根の症状としては最悪のケースのひとつです。なぜ屋根が落ちるという事態が起こってしまうのでしょうか?それは、上述の雨漏りの原因と密接に関係しています。というのも、屋根の崩落は多くの場合、先ほど紹介した屋根を支える骨組みである小屋組みの木材が腐食することにより進むからです。
小屋組みの腐食は木材が雨水を吸うことで起こることがほとんどです。つまりは雨漏りの時、野地板を直接支えている垂木と呼ばれる小屋組みの部材に雨が伝わり、徐々に徐々に腐食が進んでしまうのです。
先ほどの引っ掛け瓦桟葺きで言えば、桟木を野地板に打ち付けるとき、釘の先端が野地板にしか入っていないと桟木の固定が不安定なので、通常は野地を貫いてそのまま垂木にまで入るか、そのまま垂木を貫くよう狙って打ち付けます。
そうすれば先ほど説明した釘が錆び朽ちてしまった時の釘穴の空洞から、直接垂木に水が入り込み、より一層垂木の腐食が進んでしまいます。
土葺きなら、そもそも野地板が大きな木板でなく隙間の多いバラ板なので、直接垂木に水が落ちてしまいます。
このように屋根を支える大事な部材にダメージが蓄積し、やがては屋根の崩落に繋がります。屋根の崩落は屋根の症状として最終段階ですが、その原因は少しずつ積み重なっていった屋根のダメージです。決して、多くの住宅と無関係な話ではありません。
最後に
屋根の瓦のズレや浮きなどを放置したままにすると、どのようなリスクがあるのかご理解いただけたでしょうか?
普段気にすることのない屋根ですが、実は知らないところでこのように、様々な事態が引き起こされています。
こういった屋根や瓦の知識は、屋根という普段見えない場所で起こる話なので、普段から気にしていないと何が起こっているのか分からない専門的な話でもあります。
皆様の住宅に気になるところがあれば、ぜひ一度、プロの方々にご相談ください。また多くの業者が、屋根の点検や調査、診断を無料で行っています。屋根は毎日毎日、雨風や日光から皆様の生活を守るために働いてくれています。そんな屋根に不調がないか、定期的にメンテナンスをしてあげることは、皆様の住宅を守るために非常に重要なことです。
気になる症状がなくとも、10年から15年ほどを目途に点検などのメンテナンスをすることは、屋根を長持ちさせるための秘訣といえるでしょう。